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花びらと黒目

スーパーからの帰り道、
小さな公園に差し掛かった。

滑り台とベンチくらいしかない本当に小さな公園なんだけど
霧のような弱い弱い雨の中
今日は2人の幼い女の子が遊んでいた。



道なりに歩いていくとちょうど公園に近づいて行く。
女の子たちは水道の周りで何やら忙しくしている。
すると、小さな方の女の子がこちらを見て
「こんにちは」
と挨拶をした。

この平成の世の中で
知らない人に笑顔で挨拶をする子供がいるとは・・・と思って驚いたけれど
この辺りは一戸建ての多い住宅街、ご近所づきあいもあるようだし
親御さんにしつけられているのかもしれないな
などとマッハで考えながら
「こんにちは」
と挨拶を返した。(なるべくやさしく)

すると間髪いれずその子は「あのね、お花を洗ってるのー」
と満面の笑みで続けた。

姉妹は、水道のところでバシャバシャと手を動かしていたので
隙間から見える白いものはてっきり泡だと思っていたけれど
その声でよく見ると、それはたくさんの白い花びらだった。
え?っと思って少し近づくと、甘い香りが流れてきた。
一瞬キンモクセイかと思ったけれど、白い花びらだからたぶんくちなしだ。

「あそこに落ちてるのたくさん!土がついていたから!」
とその子はかなり嬉しそうな様子で
小さな頬は上気している。ガールだねえ。

少し年上のお姉ちゃんは
私のことを「知らない人」だと認識しているみたいだったから
あまり恐がらせないように
「いい匂いだね~」
と言うと、2人ともうん、と笑った。



公園は、T字路の突き当たりにあり
私はそこで公園に沿って左に曲がったんだけど
タタタっという足音と共に
妹が、洗い立ての花びらを両手に大盛りにして駆けてきた。
公園の敷地の隅っこから
私のほうに、そのたくさんの花びらを向けて見せてくれる。
霧を吸い込んで少し重たくなった、長い髪。
わぁー。


再びの甘い香りの中、笑顔で私は
「さようなら」
と言った。
女の子も
「さようなら!」
と言った。
黒目がちの丸い目が、まっすぐ私を見てつやつや光っていた。
そしてその子はまたすごいスピードで
お姉さんの元に戻って行った。



こんな乙女な出来事があるなんて。
少し照れたような、あったかい気持で
胸が一杯になった。


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by reeelax | 2009-07-02 21:54 | 日々のこと

34歳 シングル 始まりは乳がんstageⅢC。術前化学療法・部分切除・放射線治療・術後ハーセプチンまで終了。現在ホルモン療法中。自分の心と体を大事な友人のように扱いながら治療の日々を過ごしてきました。


by reeelax